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デザインコンサルティングと哲学シンキング──後編:哲学シンキングの活用

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はじめに

前編では、「ユーザの心に共感し、開発チームの想いに迫る」Creative Researchの必要性に触れた。その中で開発チームの想いに迫るために利用するメソッドが哲学シンキングだ。本稿では、企業の開発現場で活用されているその特徴と、活用シーンについてご紹介しよう。

哲学シンキングの特徴

開発プロセス初段で使う
前の記事で触れたように、我々は哲学シンキングを、開発プロセスの初段でデザインコンサルティングの一環で利用している。その位置づけを図 1に示した:

図 1 哲学シンキングは開発の初段で利用することが多い

プロダクト/サービスの開発に入る前に、デザインコンサルテーションを行っている。この前半で、ユーザの心にデザイン思考で共感し、哲学シンキングなどを使って開発者の想いに迫るのである。

まだコンセプトが定まっていない状態だからこそ、特定のテーマを深く掘り下げた際に、新たな視点を得る可能性が高い。

他のメソッドと組み合わせてプロセスと親和を図る
図 2は、商品企画プロセスを仮に5つのモードに分解した場合の、各モードで利用できる対話メソッド/フレームワーク一覧である。複数のビジネス戦略コンサルティング企業に協力いただいて利用されているものをリスト化した。

特に初段には哲学シンキングを含む多くの選択肢がある。この中からメソッドは、前後のつながりを考慮してコンサルタントが選択・活用していくことになる。哲学シンキングは、他のメソッドと組み合わせることで、所望の出力を得るようにしている。我々の場合は、何かの結論を得るために単独で用いることはまだない。(※編集部注:哲学シンキングを単独で用いて、何かの結論を出している実践者もいる。)

図 2 企画開発プロセスのモードごとに利用可能なメソッド一覧

真骨頂は、視点の上下による新視点獲得
デザインコンサルタントは、プロジェクトの早い段階で、クライアントの問題を整理・構造化・俯瞰して、新たな課題として定義する(図 3)。

図 3 デザインコンサルの課題創造手順の模式図

哲学シンキングは5つのステップ(図 4)を通してこれと本質的に同じことをしていると考えている。

抽象度を上げてコンセプトを抽出するには、異なる角度からテーマに切り込むと効果的なので、通常1テーマについて最低二つの問いを立てて議論するようにしている。

図 4 哲学シンキングの5 Steps

■チームを相手にする
我々は哲学シンキングを、開発チームに対して適用している。個々人の内省には、多数のメソッドがあるが、それは目的を共有して行う開発プロジェクトの加速支援にはならないと考えるためだ。

では、個人を相手にするコーチングで哲学シンキングは有効だろうか。私は、コーチングでは使っていない。哲学シンキングは、異なるバックグラウンドのメンバー同士の化学反応も利用して新たな視点に気づくことを重視しているので、最小催行人数はファシリテータを入れると3名ということになるからだ。2名で行うコーチングには合わないのだ。

■実は、セッション後に価値がある
“ワークショップ”は、セッション終了で完了することが多いが、哲学シンキングは、セッション後のレポートが極めて重要である。認定ファシリテータは、セッション終了後にセッションの内容、論点の移り変わりや結論についてのレポートを制作する。この中で、改めて考察を行うが、ここで全体の流れをもう一度追うことでその裏にある理由に思い至ることが多い。こういった洞察は依頼者にとって大変貴重な客観的な情報になるため、セッション後のレポートとその説明セッションが最大の出力と言っても良いほどである。

図 5 哲学シンキング事後レポートのスライド例

哲学シンキングの利用シーン

前述のような特徴を活かして、我々は、以下に挙げる3通りのシーンで哲学シンキングメソッドを利用しているので紹介する。

■開発プロセス中
1. 商品開発企画のコンセプトの策定

特に開発者の想いに迫るセッションである。デザインコンサルタントが図 3に示すような解析を行う際に、チーム全体の視座を一気に引き上げる目的で開催する。

この場合非常に重要なのは以下の2点だ:

a. 適切なテーマ選定(通常とは違う角度から問題を眺めるようにする)

b. 適切なメンバー選定(しがらみのない組織外の人間を数名混ぜる)

図 6 哲学シンキング実施風景

実際にこれで新しい目線が得られている。本題のディスカッション前に正解のない思考実験に慣れてもらうのも、技術者には大変効果的である。

2.通常の会議の中で一部を利用

プロジェクト中に何らかの意味解析作業などでチームがスタックすることがある。その場合、厳密には哲学シンキングではないが、STEP2-3(問いをたてて、意味的にグルーピングする)だけを取り出して実施している。

メンバーにとって「問いを問われる」というのはとても新鮮な体験である。認定ファシリテータが支援して問いの本質に迫ることで、短時間で新しい目線を得ることができる。

■開発プロセスと別にチームを対象に
チームのビジョンを構築する際にも使っている。この場合は、哲学シンキングセッションからビジョンを得るわけではない。別途組み合わせるメソッド(例えばLEGO® SERIOUS PLAY®メソッドなど)が効果的に働くように、特定領域についての考察を深めておくことを目的としている。

チームの共有ビジョンを検討するので、前述のセッション後レポートが非常に大きな意味を持つのである。

広がる可能性

以上ご紹介したように、哲学シンキングの特徴を活かすことで、この他にも様々な目的での活用ができると思っている。堅実な開発エンジニアと一度上空から問題を眺めなおすきっかけにしてみてはいかがだろうか。

→デザインコンサルティングと哲学シンキング──前編:なぜ人の想いに迫る必要があるのか